国政報告

 
 
2009年 4月

【法務委員会】4月23日(木) 〜刑事訴訟法の一部を改正する法律案(取調べ可視化法案)〜

○松浦大悟君
 民主党の松浦大悟です。
 いよいよ来月から裁判員制度が始まろうとしております。
 法社会学者の河合幹雄さんの取材によりますと、この裁判員制度というのは、九〇年代から法曹三者の間で静かに準備されてきました。刑事訴訟法六十周年の今年、いよいよその司法の大改革が行われようとしております。もしこれが成功すれば、司法の近代化のみならず、私たちの社会の在り方が大きく変わるだろうというふうに思います。この社会は私たち一人一人が支えているのだという自覚が国民の間に芽生え、民主主義の強化につながると私も大きく期待をしているところでございます。
 ただ、この裁判員制度をうまく機能させるためには、その周りに幾つものサブシステムを適切に配置をしなければならないというふうに考えます。サブシステムというのは、証拠リストの開示であったり、代用監獄制度の廃止であったり、あるいは透明な公判前整理手続、法学リテラシー教育などです。そして、取調べの可視化もその一つだと私は考えています。実際、諸外国では、そのようにサブシステムをうまく組み合わせてうまく機能をさせているという現状がございます。
 そこで今日は、まず森法務大臣と米田刑事局長に、それぞれお二人に伺いたいと思います。
 法務省と警察庁はこの取調べの全面可視化につきまして極めて消極的でございますが、それはなぜなのでしょうか。国民からの要求も高く、この裁判員制度をうまく回すために、もし全面可視化ということになれば物すごくいい制度になるにもかかわらず、これに対して消極的である理由をお聞かせください。

○国務大臣(森英介君)
 取調べの録音、録画等を始めとする取調べの在り方について考えるに当たりましては、捜査の適正の確保とともに、治安を維持改善し国民の安全、安心を確保するという刑事司法に課せられた本来の使命を適切に果たすためにどのような方策があり得るのかということを、我が国における刑事手続全体の在り方を踏まえた多角的な観点からの検討が必要不可欠であろうと考えております。
 まず、我が国の刑事司法手続においては、諸外国で認められているような刑事免責ですとか司法取引あるいは通信傍受といった強力な捜査手段が認められていないという状況でございまして、そうした中での被疑者の取調べは事案の真相を解明するため不可欠な捜査手法でございます。裁判において客観的な事実を追求し発見しようとする立場を取る我が国の刑事司法の下で、極めて重要な役割を果たしているということが言えると考えます。
 そして、被疑者の取調べの全面的な録音、録画を義務付けることにつきましては、これは再々申し上げていることでございますけれども、被疑者に供述をためらわせる要因となるとともに、関係者のプライバシーにかかわることを話題とすることが困難になるなど、そうしたことの結果、取調べの機能を損ない真相を十分に解明し得なくなるという重大な問題があると考えております。そうなりましたら、裁判において真実を追求する以前に、真相が解明できないために検挙や起訴そのものを断念せざるを得ない事例が多々生じ、真犯人を野放しにして治安に悪影響を及ぼすおそれが生じかねないと考えるところでございます。
 このように、この問題を考えるに当たっては、捜査の適正の確保とともに、治安を維持改善し国民の安全、安心を確保するという使命を適切に果たすという観点も十分に考慮しなければならないので、取調べの全過程の録音、録画の義務付けには様々な観点から慎重な対応が必要であると申し上げております。
 もとより、取調べを含む捜査が適正に行われなければならないことは当然でありまして、捜査の適正の確保もおろそかにしてはならないと考えております。捜査機関においては従来から取調べの適正の確保に努めてきたところであり、最近においても、被疑者の取調べの適正確保のため、逮捕、勾留等の被疑者と弁護人等の間の接見に対する一層の配慮をすることなど、種々の措置を講じているところでございます。
 取調べの適正は、種々の問題がある録音、録画の義務付けによらなくても、捜査機関において現に取っているこれらの取調べの機能を損なう危険のない方法で確保し得ると考えております。

○政府参考人(米田壯君)
 犯罪の捜査の遂行は、基本的人権を尊重しつつも、刑事事件の真相が正しく解明され、国民の安全と安心が確保されるという仕組みであることが重要であると考えております。そういうことからいたしますと、取調べの全過程を録音、録画することを義務付けることにつきましては、事件の真相解明に重要な役割を担っている取調べの機能に大きな影響を及ぼし、事案の真相を十分に解明することを困難にし、犯罪の検挙活動に支障を及ぼすおそれが大きいということから適当ではないと考えております。
 なお、これにつきましては、司法制度改革審議会の意見書におきましても、刑事手続全体における被疑者の取調べの機能、役割との関係で慎重な配慮が必要であるとされているところでございまして、警察といたしましても様々な観点から慎重な検討が必要であると考えております。
 なお、取調べの適正化については、警察におきましては取調べ適正化施策を策定をいたしまして、本年四月一日から監督制度を中心とする適正化施策を全面施行をしております。また、裁判員裁判に対応するためには様々な工夫をしておりますが、その一環として取調べの録音、録画の試行を昨年九月から開始し、これも四月一日から全都道府県警察に拡大して実施をしているところでございます。

○松浦大悟君
 昨日質問取りに若い官僚の方が来られて、米田さんと同じことをおっしゃっていました。現在一部の可視化が行われていて、何のトラブルもないんだからこれで十分なのだという御説明でございました。しかし、私、これ違うと思います。
 例えば、ジーパンの後ろのポケットに穴が空いていたとして、その穴から財布が落ちそうになっているとします。穴が空いているので、あなた財布落ちそうですよというふうに指摘をする、いやいや、私は今まで財布落ちたことないからこれで十分なのですというふうに言っているように私には聞こえるわけですね。穴が空いているんだから縫えばいいじゃないですか。せっかく国民の皆さんがこの全面可視化をやれば安心して裁判員制度に参加できると言っているのだから、警察庁も取調べの在り方変えればいいじゃないですか。なぜ国民のこうした要求を聞かないんでしょうか。国民の足を引っ張る警察庁は私は要らないというふうに言いたいと思います。
 刑事裁判では、百人の罪人を放免するとも一人の無辜の民を刑するなかれという推定無罪の原則が採用されております。しかし、取調べの全面可視化に反対している警察の皆さんの主張を聞いていますと、過って無辜を一人たりとも処罰してはならないというのはあくまで理想であって、少々のことには目をつぶってでもホシを挙げるということを優先しているように私には見えて仕方がありません。
 そこで、法案提出者に伺います。
 刑法の推定無罪の原則を踏まえて、なぜ取調べの全面可視化が必要なのか、改めて教えてください。

○前川清成君
 おはようございます。
 可視化に関しては、私たちは二つの意味で必要だろうと思っています。一つは、今ありましたが、冤罪をなくすというために必要、もう一つは裁判員制度の基礎的な前提条件として必要だと考えています。
 お尋ねの無罪推定の関係を申し上げれば、被疑者は、当然のことですけれども、真犯人と確定したわけではありませんので、世界人権宣言等において無罪と、こう推定されるわけです。しかしながら、捜査段階においては、捜査官の皆さん方が仕事に熱心な余り、あるいは被害者や世論の厳しい処罰感情であったり、あるいは捜査官本人が大変凄惨な犯罪現場に赴いたなどから、時として非常に厳しく被疑者と向かい合って、あるいは無理やりに自白を獲得しようとするということが往々にしてあるわけであります。しかし、その無理やりに獲得した証拠、強引に獲得した証拠というのは、免田事件始め四件の確定死刑囚の無罪事件などが教えるように、真実ではありません。真実でない自白に基づいて裁判がなされてしまったならば、冤罪を生み出すことになります。
 この点で、私たちの国の刑事訴訟法は、必罰主義ではなくて、様々な基本的人権を守りながら刑事裁判を遂行していくというデュープロセスの考え方に立って、憲法の中にも数多くの刑事訴訟に関する基本的人権が盛り込まれています。この基本的な人権が守られていたならば冤罪は当然発生しないはずでありますけれども、先ほど発議者の松岡委員からも説明がありましたが、氷見事件など、近時においても様々な冤罪事件、とりわけ無理やりに自白を獲得しようとしたために発生した事件が起こっています。
 ですから、私たちは、この無罪推定の原則を更に推し進めて、そして冤罪をなくすために、この憲法の規定から更に一歩前へ行って、そして世界水準である可視化を導入することによって私たちの国から冤罪事件を根絶したいと、こんなふうに考えているところでございます。

○松浦大悟君
 引き続いて伺いたいと思いますが、取調べの全面可視化を実施することによって自白率が下がるということはあり得るのでしょうか。既に行われているイギリス、オーストラリアの実情はどうなんでしょうか。教えてください。

○松野信夫君
 私どもの方でいろいろ諸外国の事例も検討させていただきました。諸外国では、取調べの全面的な録音、録画をしているところ、あるいは取調べの弁護人立会いを認めているところ、これは諸外国でも様々でございますが、私どもが調べた限りにおいては、そういうような録画、録音することによってしゃべらなくなったとか、あるいは自白が得られなくなったとか、そういうようなことでは決してないというふうに聞いております。
 今委員が御指摘されたイギリスとかオーストラリアでも、取調べの全過程は録音、録画が既に実施をされているわけですが、例えばそういうような自白率が下がったというような報告は聞いておりませんし、むしろ逆に、それまでは警察あるいは検察で不当な取調べが行われていたのではないかというような非難、攻撃がなされた場合もありましたけれども、近時はそういうような取調べに対する非難、そういうものが減ってきていると、こういうことでございます。

○松浦大悟君
 お話を伺えば伺うほど、全面可視化はいいこと尽くしというふうに聞こえて仕方ありません。
 さて、国民の皆さんは、もし冤罪になれば自分に責任を取ることはできるだろうかと心配をされております。
 四月の二十一日のNHKの報道で、千葉大学の松村良之教授の研究が紹介されておりました。松村教授のグループが不安と裁判員への参加意欲との関係について調査をしたところ、不安が強い人ほど裁判員になりたくないと回答し、参加への拒否感が強いことが分かりました。つまり、国民の中には、裁判員制度は本当に制度として公正さを担保できているのかという漠然とした不安があるのだというふうに思います。
 そこで、法案提出者の皆様に伺います。
 私は、国民が安心して裁判員制度に参加するためにはその不安を取り除く必要があるだろうというふうに考えます。取調べの全面可視化は国民の皆さんの不安を取り除くことにつながりますか。

○前川清成君
 可視化によって裁判員に関するすべての国民の皆さん方の不安を取り除けるものではないと思います。
 一昨日、和歌山のカレー事件の最高裁判決がございました。これによって、ここ数日は、裁判員の皆さん方が死刑判決を下さなければならない、このことに関する不安が指摘されております。そのほかにも、裁判員に関して、法律的な知識は大丈夫だろうかとか、あるいは事実認定ができるだろうかと、様々な不安もあると思います。
 ただ、裁判員の皆さん方にとって実際上も大きな不安になるのは、供述調書の任意性が争われた場合ではないかなと思います。その供述者が作るのではなくて、捜査官の方が一人称でお作りになると。ですから、字面としては理路整然としておりますし、また、ほかの関係証拠との関係も整理されている。その供述調書が任意になされたものであるのかないのか、これを後日、その書面を見て、あるいは関係者の話を聞いて判断するということは、それまで裁判員になったほとんどの皆さん方は任意性という言葉さえお聞きになったことがないのでしょうから、大変難しい問題があると思います。
 この点で、その取調べの状況というのがビデオに録音、録画されていたならば、その取調べ状況を再生することによって立ち所に任意になされた供述かどうか、これを判断することができますので、その意味においては、可視化は裁判員の皆さん方の不安を一つ取り除くことができると思います。
 なお、この機会に少し付言をさせていただきたいんですが、任意性については、裁判員の皆さん方だけではなく、プロの皆さん方、裁判官の皆さん方も実はそんなにたやすく判断できていた課題ではありません。
 多くの事件では、任意性が争いになった場合に、裁判所が任意性に関する判断を避けて信用性のところで落とすというようなこともよくありましたし、大変有名な論文で、平野龍一先生、刑事訴訟法を勉強する方々は多くがこの方の教科書をテキストにされたと思いますが、平野先生が昭和六十年にお出しになった「現行刑事訴訟の診断」、これは、最後に、我が国の刑事司法はかなり絶望的であると、こう結論付けている論文でありますけれども、その中で、裁判官が自室で見抜く眼力、つまりは調書の任意性を見抜く眼力を持っていると裁判官が考えるのは自信過剰であると、ここまで言い切っておられます。ですから、私は、これは、裁判官の皆さん方も実は可視化については歓迎をされているのではないかなと。
 ちょっと時間をいただいて申し上げれば、米田さんやあるいは森法務大臣は可視化について反対だと、こういうふうにおっしゃいましたけれども、現場の捜査官の皆さん方、警察官やあるいは検察官の皆さん方、実はこの可視化を私は歓迎されているのではないかと、そう思っています。
 なぜならば、日本の警察官の皆さん方、検察官の皆さん方、ほとんどの方々は一生懸命お仕事をされている。森法務大臣じゃありませんが、法と正義に照らして適正な捜査をしておられる。ですから、ほとんどの警察官の皆さんや検察官の皆さん方にとっては、可視化があったとしても何ら困るところはないはずであります。エリートの皆さん方が可視化は反対だ反対だと、こうおっしゃるのは、私は現場の捜査官に対する信頼という点でいささか疑問に思っているところでございます。
 以上です。

○松浦大悟君
 森大臣、事件は現場で起きているんです。是非現場の声を聞いていただきたい、そういうふうに思います。
 さて、取調べの可視化は、私は裁判員制度とセットで行わなくてはならないと常々思っておりました。なぜなら、この取調べの可視化というのは、裁判員制度をうまく回すための一つのサブシステムであるというふうに私はとらえているからです。しかし、今回の法案では、この裁判員制度の開始に試行が間に合いません。本来なら同時にスタートさせるべきだったというふうに思いますが、この試行の時期についてはどのようにお考えでしょうか、法案提出者に伺います。

○松岡徹君
 御指摘のとおりでありまして、この法案では、公布の日から六月以内に証拠の一覧の開示については実施していくと。重大事件の取調べの録音、録画については一年六月以内、そして、その他の事件については三年以内にそれぞれ政令で定めるというふうになっています。
 来月の二十一日にはもう裁判員制度がスタートしますので、実質間に合わないということでありますが、私たちは、一昨年の十二月に今回の法律と同様のものを提出をさせていただいて、昨年の六月に参議院では可決、成立をさせていただいています。そのときの思いを、実は今年から始まります裁判員制度に何とか間に合わせたいという思いでありましたが、残念ながらこういう結果になってしまったわけでありますが、今委員御指摘のように、非常に大事な制度だと私たちも考えておりまして、政府としても、その趣旨を踏まえて、法律の施行を待たずにできるところから、特に重大事件等々はできるところから全過程の録画、録音を実施することになってほしいというふうに期待をしているところであります。

○松浦大悟君
 次に、現在行われています取調べの一部可視化についてお伺いをいたします。
 警察の皆さんが主張する取調べの一部可視化では、私は自白が強要されたものであるかどうかということを事後的に検証することはできないというふうに思っております。メディアリテラシー研究によりますと、映像は幾らでもうそをつくとされています。
 例えば、皆さん、イラク戦争のときのニュース映像を思い出していただきたいと思います。例えば、イラク戦争でバグダッドが陥落したときのニュース映像を皆さん覚えていらっしゃるでしょうか。イラク国民が公園でフセインの銅像を引き倒して歓喜している場面が流れました。ところが、後日、公園全体を映した映像が公開されたところ、銅像の先にはロープが付いていて、アメリカ軍の戦車が引き倒したものだということが分かりました。フセインの圧政に苦しんだ市民が自発的にフセイン像を倒したのではなくて、アメリカによるやらせ映像だったということが分かったわけです。
 映像は幾らでもこのようにうそをつくことができます。どの部分を選択するかで全く違ったメッセージになってしまうと。こうしたメディアリテラシー研究を踏まえて、各国では取調べのカメラの台数を増やすなど、様々な工夫をしております。私は、こうした映像の特性を考えれば、一部可視化は言語道断だというふうに思いますが、法案提出者の皆様はこの一部可視化についてはどのように考えていらっしゃいますか。

○松岡徹君
 メディアリテラシーの問題は昨今大変重要な問題になっておりますが、今回の私たちが提案をしている法案は、すべての場面を可視化するということであります。検察の方では既に一部録音、録画を実施しているということでありますけれども、まさに編集が故意に編集されるという可能性があるわけでありまして、この法案の中にもそういったことを防止するような条項を設けておりますが、警察、検察がもう既に行っている一部の録画、録音というのは、結局、被疑者に自白後に供述調書を読み聞かせるところ、あるいは確認する場面とか、その動機を尋ねるところでありまして、それで十分だというふうにおっしゃっていますけれども、むしろ問題は、その供述に至るまでの取調べの内容が問題なわけでありまして、逆に、裏返して言えば、そこまで検察、警察が取調べで自白を、供述調書を取ったと、それの証明をして、署名をしている場面を録画するならば、そこまで自信のある結果を録画、録音するならば、その前のすべての取調べも録音すればいいだけの話でありまして、そういう意味では、私たちは一部の録画、録音というのはまさにこの趣旨に合わないというふうに思っております。
 ちなみに、メディアの、言うところのメディアリテラシーという部分では多少今回の録画、録音の趣旨とは違うかと思いますが、そういう疑いといいますか懸念が生じる以上は、すべての場面を録画、録音するべきだという立場に立っております。

○松浦大悟君
 一部の切り取られた映像というのは、確かに現実を映しているかもしれないが、それは真実ではないということを強調しておきたいというふうに思います。
 次に、裁判の長期化の大きな要因に自白の任意性の争いがあると思います。これは全面可視化によりかなり改善されるのではないかというふうに私は考えますが、法案提出者の皆さんはどのように思われるでしょうか。
 逆に、検察や警察で進められている一部可視化ではどのようになるというふうにお考えでしょうか。
 以前、テレビ番組で行われた実験がございます。その実験では、一部の可視化では、一般国民はその自白が正しいのか無理やり自白をさせられたのか見分けが付かないという結果が出ておりました。一部の可視化では逆に私は裁判が長期化してしまうのではないかというふうにおそれを抱いていますが、法案提出者の皆様の御意見を伺わせてください。

○松野信夫君
 委員からとてもいい指摘がありまして、私も委員と同様の認識を持っております。
 我が国の刑事裁判というものは、密室での取調べ、そしてその結果得られる自白調書、これに大変依存をしているわけでありまして、そうすると、その供述調書が作成された過程が果たしてどのようなものであったか、本当に任意に自発的に発言がされたのか、取調べがどうなされたか、これが時として裁判の大きなテーマになって、何人もの取調べ官が法廷に呼ばれては証人尋問を受ける、それが裁判長期化の非常に大きな要因になっていたわけであります。
 我々が主張するこの取調べの全面的な可視化をすることによって、一つには、そういう不当な取調べを抑止するという効果が期待できるわけでありますし、またもう一つには、何人もの証人を裁判所に呼んで取調べがどうだったかというものをやる必要がない。ビデオできちんと確認をすれば、ある意味では立ち所に取調べの様子が分かるわけでありますので、長期化を防ぐ非常に大きな要因になるだろうと思っております。
 それから、一部の可視化ではどうかということでありますが、現在行われている一部の可視化というものは、まさに自白をした部分、供述調書読み聞かせの部分、ここだけをビデオ録画するということでありますので、それまで実際にはどういう取調べをしていたのか、肝心なところが抜け落ちるわけであります。かなり厳しい追及的、威迫的な取調べをして、それで完全にもう何を言っても聞いてもらえない、結局迎合的な形になってしまって、その迎合したところだけ取るということになるとやっぱり任意性が争われる、任意性が争われると取調べ官を次から次に証人尋問しなきゃいけないと、こういうことで、一部ではかえって裁判の長期化を招きかねない、このように考えております。

○松浦大悟君
 これまで密室での捜査の在り方には様々な批判があったわけでございますが、もし全面可視化が実施されたならば、警察官もこれまでの取調べの方法と意識を変えなければならなくなるでしょうか。その点はどうでしょう。

○前川清成君
 前回の法務委員会で少し、私、米田刑事局長と議論をさせていただいたんですが、そもそも、可視化を待たずとも、裁判員制度がスタートすることによって警察の捜査の在り方というのは大きく変わらざるを得ないのではないかと、私はそう思っています。
 司法制度改革の一環として裁判員制度がスタートいたしまして、三人の職業裁判官とともに六人の裁判員の皆さん方が刑事裁判を担っていただくわけですけれども、この裁判員の皆さん方に、今までのように、何百ページあるいは何千ページという供述調書を御自宅に持って帰っていただいて、そして裁判官のようにそれを読み込んでまた裁判に臨むということは事実上不可能です。ですから、裁判員裁判のその場所で目で見て分かり、耳で聞いて分かる、そういうような立証をしなければならなくなります。
 捜査というのはもちろん刑事裁判を前提としてあるわけですから、目で見て分かる、耳で聞いて分かる立証手段を考えて捜査も進むわけで、そういう意味からしますと、膨大な調書を作ったところで、結局は刑事裁判の役に立たないというか、刑事裁判に提出することができないわけでありますので、是非警察やあるいは検察庁においてもその点を御認識をいただいて、より分かりやすい捜査の在り方、要するに、密室で被疑者と向かい合って、そして延々と一人称の供述調書、物語風の供述調書を作ってそれを裁判所に出すという今までのやり方では裁判員制度が維持できないということを是非御理解をいただいて制度の改革等にお努めいただきたい、こんなふうに思っています。

○松浦大悟君
 私は裁判員制度を成功させたい、だから警察の皆さんにも変わってもらいたいと思います。私たちと一緒に公正な取調べの方法を目指して頑張りましょう。
 以上です。

10:00, Thursday, Apr 23, 2009 ¦ 固定リンク


 


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